新卒で就職した会社は、とある「金型製造会社」でした。そこで私は「測定」という部署に配属されました、もっと分かりやすく言うと「品質保証」です。会社ではたくさんの方が働いており、従業員の人達は個性的の人もいましたが、基本的には皆優しくいい人ばかりで、アットホームなところが気に入っていました。それが無ければ持たずに辞めていたのは間違いありません。
会社は良くしようという姿勢は見れた
また会社では「5S」が徹底されていました。5sとは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾」のことを意味し、会社内を組織的に綺麗に保つ活動、業務の無駄を省く改善案を出した人は「金一封」が送られるという改善大賞というものも実施していました。より良い会社作りをしようという意欲は見える会社でした。
当時は会社も大きくなろうという発展途上の状態でしたので、小さい工場から大きい工場へと変革の時でした。しかも売上を上げる為にドンドンと仕事を受注していくという方針です。
2人の正反対な教育係
新入社員の私は、中途採用で入った同い年の先輩から仕事を教わっていました。しかし先輩は「放任主義」でしたので、毎回聞かないと答えてくれないタイプで、細かく教えてくれませんでした。
ですので分からない事だらけで質問をするのですが、先輩自身も自分の仕事を並行しているので、どんどんイライラが募り、「次から聞かずに自分でやってよ」と突き放されました。最終的にたったの1年では社員としての知識や腕はまだ未熟で、作業はとても繊細で難しい部署なのですが、教えてもらいにくい悪い関係になってしまいました。
繊細なミクロンの数値が左右される世界ですので、きちんと測定できているかも不安な状態で仕事をしていました。あやふやなまま仕事をするのはつらいものがありました。
そんな時に本社から指導員として派遣されてきた方がおり、1から教え直してもらったので、どうにか仕事にはなりました。
成長期の会社は従業員より売上を重視した・・・
それからはどんどん仕事が舞い込んできて、一台の機械では処理しきれないくらい仕事が山積みになりました。加工者が私の後ろに並び、次の測定を待つという信じられない状態になっていました。スーパーの長蛇の列のレジ係のような雰囲気です。
いくら頑張って急いでも「正確な数値」を出すにはそれなりの時間が必要です。気付くと日を越えてしまった・・・という日が何日も続きました。会社で働く従業員みんながとても疲弊しきった顔をし、次第にミスも多くなり現場の空気は最悪で不満が充満していました。
最悪な環境でも給料が高ければまだマシなのに・・・
どうみても労働基準法をかなり犯している程の残業時間を会社で拘束され、お給料日になりました。仕事内容も特殊な技術でレベルの高いものですし、残業も日を越えており仕事の量もかなり増えています。これが毎日でしたので、それなりの給料の額だと思ったのですが明細を見て愕然としました。
新入社員とはいえ一応大卒です。どう考えても業務内容や仕事量から見て「低すぎる金額」で頑張っても報われない・・・と感じました。聞いてみると他部署の従業員もそんな感じで、これは割に合っていない・・・という不満が社内の雰囲気から感じ取れました。
失った物は大きいが成長はした
仕事のあまりのしんどさから会社を辞めていく人が続出しました。私もこの給料なら辞めようかと何度も真剣に考えていたものです。しかしその後会社が大きくなって経営状態が安定したのもあり、職場環境は少しは状況改善されました。
現在は妊娠をきっかけに退職しましたが、当時はどう考えてもブラック企業だったなと思います。会社は従業員という戦力を失いましたが、売り上げというものを手にしました。これから更なる環境改善をしていくとは思いますが、あの時もう少しどうにかならなかったのかと今でも思います。