引越しを届け出ないと罰金?許される場合と住民票の移動変更について

転勤・結婚・就職と春になると特に引越しする方が多くなります。市役所に行って手続きをしたり、電気も水道も届出を出さないといけません。急な引越しや時間がないときほど「住民票の変更」が遅くなったり忘れがちになります。中には住民票を動かさない方もいますし、転出・転入届と2つ出す必要があるので、パソコンでネットでポチっとできれば楽なのですが、残念ながらそんなシステムはありません。しかし期限内に必ず移動させないと、後々厄介な事になります。

住民票を移動・変更するには

住民票とは住民基本台帳という住民に関する記録の事です。誰がどこに住んでいるかを市区町村が把握する事で、「国民年金」や「健康保険」それに「児童手当」に「選挙の投票」といった様々なサービスを円滑にする為に存在します。住民票には下記のような情報が記載されています。

・氏名
・生年月日
・性別
・世帯主
・戸籍
・個人番号(マイナンバーの事)

新しい住所が決定したらすぐに移動の手続きが必要になりますが、住み始めて2週間以内と期限が区切られています。その根拠は住民基本台帳法の第二十二条~第二十四条に記載されています。それは「転入」「転居」「転出」した時です。

第二十二条 転入(新たに市町村の区域内に住所を定めることをいい、出生による場合を除く。以下この条及び第三十条の四十六において同じ。)をした者は、転入をした日から十四日以内に、次に掲げる事項(いずれの市町村においても住民基本台帳に記録されたことがない者にあつては、第一号から第五号まで及び第七号に掲げる事項)を市町村長に届け出なければならない。

第二十三条 転居(一の市町村の区域内において住所を変更することをいう。以下この条において同じ。)をした者は、転居をした日から十四日以内に、次に掲げる事項を市町村長に届け出なければならない。

第二十四条 転出(市町村の区域外へ住所を移すことをいう。以下同じ。)をする者は、あらかじめ、その氏名、転出先及び転出の予定年月日を市町村長に届け出なければならない。

出典:住民基本台帳法 第二十二条 電子政府の総合窓口e-Gov

つまり「転入届」「転居届」「転出届」の3つとも2週間の期限が区切られているのです。ただし転居届けに関しては、同一の市区町村内で引越しをした時に提出する書類です。住民票の届出としてもう1つ「除票」というのがありますが、これは死亡したり転出した時に抹消される住民票の事を「除票」といい、写しが役所で確認できます。

引越し先が決まって住所が確定した場合、まず現在の市区町村の役所で「転出届」を出してから、新しい市区町村の役所で「転入届」を出します。万が一、転出届を出す前に引っ越した場合は「転出依頼書」を以前住んでいた市区町村のホームページでダウンロードして、郵送で手続きをすることが可能です。

では別に役所へ行かなくても全て郵送でいいのでは、と思うかもしれませんが郵送は既に引越しをして以前の場所へ来ることが困難な方のみ、に認められた特別な方法です。

実際に役所へ行く際に必要なものは「身分証明書」(運転免許書・健康保険証・パスポート等)「印鑑(シャチハタでないもの)」が必要です。マイナンバーカードは身分証の代わりにもなりますし、持っている方は一緒に持って行きましょう。マイナンバーカードは任意ですが、海外へ行く方は提出必須です。

住民票は必ず移さないとダメなのか?

住民票は住民のサービスを正確に受ける・把握する為の重要な書類です。大事な書類がもう住んでいない家に届いた場合、次の住人に個人情報が知られる危険性もある為、1日でも早く移動が必要です。但し実家に住んでいる場合は、後述しますが条件により住民票を移動させなくて良い場合があります。

必ず住民票を移動しなければいけない根拠は住民基本台帳法の第五十二条です。

第五十二条 第二十二条から第二十四条まで、第二十五条又は第三十条の四十六から第三十条の四十八までの規定による届出に関し虚偽の届出(第二十八条から第三十条までの規定による付記を含む。)をした者は、他の法令の規定により刑を科すべき場合を除き、五万円以下の過料に処する。
2 正当な理由がなくて第二十二条から第二十四条まで、第二十五条又は第三十条の四十六から第三十条の四十八までの規定による届出をしない者は、五万円以下の過料に処する

出典:住民基本台帳法 第五十二条 電子政府の総合窓口e-Gov

つまり嘘の届出をしたり、正当な理由が無く届出をしない場合は「5万円以下」の過料となるのです。過料とは軽い行政の処罰という意味です。ただしこれに該当させられたという事は聞いたことがありません。これにより移動していない方も多いですし、実家のまま一人暮らしをしている方もいます。

忙しければ代理で委任状を書いて任せる方法もある

本来であれば住民票の移動・変更の申請は「本人」もしくは「世帯主」が行う必要があります。子供が引っ越す場合は子供本人でもいいですし、世帯主の親でも構いません。しかし一人暮らしで忙しかったり、将来結婚する予定の彼氏・彼女と行った同居人という場合、委任状を書くことで代理人による届出も可能です。

住民異動届用の委任状が市区町村のホームページからダウンロードできます。テンプレートを作成してくれているところも多いので、書き方は簡単でしょう。但し委任状は必ず引越しをする本人が書かなくてはなりません、代理人による代筆は基本的にNGです(相応の理由があれば状況による)。誰がどこからどこへ引っ越すのかを記入して、代理人が自分の認印を持っていき、提出して完了です。

実は住民票を移動しなくても良い方法もあります

引越しが頻繁な転勤族の方や、実家を拠点に活動してあちこち引越しをする方がいます。そういう方が届出を出すのは大変です、その度に両方の役所へ届出を出す必要があるからです。実はある一定の事情があれば、住民票は移動しなくても構いません。

住民基本台帳法の第五十二条を見てみると、「正当な理由がなくて」移動しなければという条件が付いています。逆に言うと正当な理由があれば住民票を移さなくても構わないのです。

例えば新しい引越し先の住所では「短期間」しか住まない場合、1年以内に帰る事が決まっていたり大学生が大学へ通う為に一人暮らしや下宿をしており実家へ帰る事が決まっている場合です。

住民票を移動していない人が選挙に投票したい、自治体で判断が分かれる

こんなデータがあります。住民票の移動をしていない東京の学生が、地方に住民票を残したままにしており地方の選挙投票を行いたいと言ったところ、県によって投票可能と不可能と対応に差が出たというのです。確かに引越しをしたから以前の住所の投票はできないのは分かります、しかし住民票は以前の住所にあるので投票できるという双方の言い分も分かるのです。

公益財団法人・明るい選挙推進協会の昨年の調査では、住民票を移していない大学、大学院生は6割以上。総務省は「どちらも間違いとは言えない。住民票は転居先に移すのが原則と周知するしかない」としている。

出典:学生 実家で投票できる? 住民票移さず転居 九州自治体判断割れる

実際に住民票を移していない場合でも、総務省自体が周知するしか・・・といっているので過料の話すら出ていません。よほど偽装で投票など悪質な事が無ければ取り締まられることは無さそうです。

他にも生活の拠点が今住んでいるところ、という方もいるでしょう。週末は実家に戻っていたり、親の介護をする為に度々通っていたりと、拠点が実家にある場合は特に問題にならないというのが一般的な考えです。

3月から4月は非常に混雑するので可能であれば、住民票の移動変更は少し日をずらす事をオススメします。大安や月曜日も混雑しますので覚えておきましょう。